残念ながら、ハンセンの足も鎧で覆われていて、蠍尾はまったく突き刺さらず、ぶつけられて鳴り響いただけだった。
ハンセンは足で踏みつけ、たちまちその毒晶蠍子の体を押しつぶした。
「原始級の生物、毒晶蠍子を狩猟しました。獣の魂は得られませんでしたが、食べることでランダムに0から10ポイントの原始遺伝子を得ることができます。」
ハンセンは毒晶蠍子の死体を拾い上げ、用意しておいた布袋に入れて背負い、底無しの穴へと進み続けた。
ブラックビートルのアーマーが身を守ってくれるお陰で、ハンセンは道中で出会う毒晶蠍子を蹴散らして行った。作業は1時間ほどでほとんど終了し、既に百匹近くの毒晶蠍子を狩猟し、布袋をぷっくりと盛り上がらせていた。
「キノコを摘む少女は、大きな籠を背負って、裸足で早朝から森林や丘を歩きまわります。彼女が摘むキノコは最も多く、星の数ほど……」ハンセンは小唄を口ずさみながら、踏みつぶした毒晶蠍子を拾い上げて布袋に入れていった。
昔、お母さんが仕事で稼ぎ家族を養っていた時、家にいるハンセンはハン・ヤンの面倒を見て、彼女に童話を読んだり子守唄を歌ったりしていた。成果が上がると思わずに子守唄を口ずさむ癖がついてしまった。
「金貨?」ハンセンはうれしげに歌っている最中、突如自分が名付けたニックネームを人々が叫んでいるのを聞き、びっくりした顔で声が聞こえてきた方向を警戒して見つめた。
広大な岩窟の中、二十歳代の女性が赤い皮の鎧を着て、一本の鍾乳石柱にもたれかかっていた。彼女は驚喜の顔で自分を見つめていた。
「青瑛(シンシャン)!」ハンセンは声を出して叫んだ、まさかこの場所でこの女性に会うとは思ってもみなかった。ハンセンはすぐに身を転がして逃げようとした。
シンちゃんの尻をつついたあと、彼女に対するある種の恐怖が心に残った。
「逃がさないで、あなたと神天子の確執は私とは無関係だ。しかも、あなたに面倒を起こす能力なんて今はないよ」とシンシャンは急いで言った。
ハンセンはようやく理解した。今の自分は"屁股狂魔"ではなく、"金貨"であり、シンシャンは今、一人だ。何も恐れることはない。