ローランはアンナからティリの20歳の誕生日が近いというニュースを聞いた。
その瞬間まで、彼はその事を思い出していなかった。
彼を怠慢と言えばそうだが、第四王子の記憶は彼にとってデータベースであり、必要なときにだけ検索するものだった。その中に時政や秘術に関するお話は少なく、トラブルを引き起こした経験や自己満足の刺激的な手法が全てであったため、彼がこの記憶を振り返る頻度はどんどん低くなっていた。
ティリについては、第四王子にとって過去の黒歴史の一部でしかなく、その部分はごく僅かで、彼女に関する内容は全て底層に押し込まれ、まるで思い出されることを望んでいないかのようだった。
ティリの誕生日とは、目覚めの日を意味するわけではなく、文字通りの誕生日を指す。超越者の特性により、彼女は自分がいつ魔女に目覚めたのかさえ知らない。また、毎年悪月のころには、魔法の力が身体を侵食する転換点を感じることもない。だから、彼女にとって、誕生日は唯一無二のものなのだ。
ローランがこの記憶を探り直した結果、ティリが女王の最後の子供であるためか、ウェンブリトン三世がまだ生きていた時には、毎年の冬に内城区で盛大な誕生日祝いが行われていたようだ。このような待遇は、日常的に特に寵愛されていたティファイコでさえ受けたことがなかった。ただし、その他については彼女のことをあまり気にかけない様子で、それがなければ第四王子が何度も大胆に妹を虐めることはなかっただろう。
さらに彼の記憶を遡ってみると、興味深い発見があった。
ティリの成人の日、その祝いの規模は最大で、後の成人式に比べると相当なものだった。四人の辺境保護者が王都に駆けつけただけでなく、明け方、狼心と永遠の冬からのお祝いの品、さらには峡湾諸島からも使節団が派遣された。
これに対してティファイコとジャシアは嫉妬し、ティリに教訓を与えて、自分が父親に好きになられている人間ではないということを理解させたいと思った。ウェンブリトン三世がそうしたのは、亡くなった女王への補償であり、ティリへの好意も、ただ母親の霊をなぐさむためのものに過ぎなかった。