ローランが庭園の中心に歩み寄ると、思わず呆然とした。
通路の先には、突如として植物で造られた小さな部屋が現れ、木幹や改良後の作物が壁を形成し、縦横に交差する蔓が頭上に吊り下がっている。それはまるで丁寧に編まれたようで、緑の葉の中にはいくつかの透明なぶどうが吊り下げられている。部屋の中央には篝火が燃え盛り、周囲には緑豊かな家具が配置されている。よく見ると、それらはすべて地面から伸びてきた奇妙な植物でできている。ある瞬間、彼は自分が童話の世界に来たと思ったが、篝火の周りにいくつかの馴染みのある人影が立っていなければ、彼はこれが夢だと疑わざるを得なかった。
「これはどういうこと?」
ティリーが振り返り、驚きの表情を浮かべた。「葉子の能力が進化した。彼女はこの庭園に変わったのよ。」
「彼女はどこに?」とローランが驚きの声を上げた。
「彼女はすでに植物と一体化している。」とティリーが周囲を見回しながら言った。「あなたが目の前に見ている景色、すべてが葉子の一部分なの。」
以前、自分が巨大な生物の体内を歩いていると感じたことが間違いではなかったのだと知り、ただその「巨大な生物」が葉子に変わっただけで、ローランの心は突如として締め付けられた。「彼女が元に戻れないことはないだろう。」
「能力を解除すれば、私は正常な状態に戻ることができる。」と葉子の声が突然響いた。
しかし、よく聞くと、これは彼女自身が話しているわけではなく、葉の揺れるサラサラとした音、枝がこすれる音が混ざり合って成り立つ言葉である。
相手の応答に、ローランの心は少し落ち着いた。「私たちの話を聞くことができるのか?」
「それだけでなく、見ることも、匂いを嗅ぐことも、触れることもできる」と葉子は喜びを込めて話した。「私は庭園の一切の変化を感じることができます。鳥が木の枝に巣を作っていること、虫が幹を這っていること……この感覚は言葉ではなかなか表現出来ません。ティリーさまのおっしゃる通り、私は今、庭園そのものなんです。あなたがここに入ってきた瞬間から、私はあなたに気づいたのです。」