ハンガーバスケットが地に着くと、30歳前後と思われる赤髪が腰まで垂れ下がっている魔女が篮子から飛び出し、出迎えた人々に言った。「皆さん、こんにちは、辺境の町へようこそ。私はウェンディです。」その後、彼女は灰燼を見つめ、喜びに満ちた笑顔を浮かべた。「あなたも来たのね。」
彼女は以前灰燼が話していた魔女なのだろうか?シルヴィーは二人を思慮深く眺めていた。どうやら彼女たちは以前から知り合いだったようだ。
「ようこそ、私はアンナ。」もう一人の魔女の姿がシルヴィーの視線を一瞬で引きつけ、湖のように澄んだ青色の両目が一際目立った。だが、彼女が本当に気になったのは相手の魔力だったーー強大で深遠でほとんど傷が見えない。黒、白、灰色から成る立方体がゆっくりと回転し、周囲から集まってくる魔力ですらその軌道をねじ曲げてしまう。
これほど驚異的な力を持っているなんて?シルヴィーは初めてこんなに圧倒される魔力を見た。
「ハイ、 私はライトニングって言うの!」先ほどからハンガーバスケットの側を飛び回っていたのはこの少女だった。マクシーもすぐに彼女の肩に降り立った。
「クークー!」
灰燼が眠りの島の魔女たちを簡単に紹介したあと、ウェンディは微笑みながら皆さんにハンガーバスケットに乗るよう誘った。
「この大きなガス袋の上にいるのが熱気球です。ただ十分な暖かな空気を供給できれば、皆さんを山群を越えて目的地まで連れて行くことができます。」彼女は少し停止し、灰燼に向かって質問した。「本当に町を訪れないの?恐らく殿下もあなたに再会したいと思っているでしょう。」
「彼の魔女を引き抜くつもりの者を歓迎するわけないでしょう。」灰燼は笑った。「この子供たちのこと、お願いしますね。」
「そうなんだ……」とウェンディは少し残念そうに唇を尖らせた。「大丈夫、彼女たちをしっかり世話するわ。」
「皆さん、しっかりつかまってください」とアンナが注意を促した。「遥望号がもうすぐ離陸します。」