ローランは最近、楽しい気分に浸っている。
一人でオフィスに座っていても、時々ハミングしながら、熱気球のハンガーバスケットで過ごした素晴らしい時間を思い出す。
アンナさんが目を閉じてキスを求める様子はあまりにも可愛らしく、思い出すだけで彼の口元が上がってしまう。そして何よりも大切なことは、彼女の言葉が示す意味が、燃え上がる感情を明らかにしたことだ。
彼がそのとき出来た唯一のことは、彼女に対してより熱烈に応えることだった。
その結果、着地したときにローランは唇にちょっとした痛みを感じた。
長いキスで息苦しくなり、慌てて歯を使ったのだろうか?
どちらにせよ、彼がこうした感情を経験したのは久しぶりだった。
人生が四分の一を過ぎると、テレビや映画、小説や漫画から身につけた技がついに活かされる場が出てきた。しかもその相手が美しいアンナさんだったことから、ローランは自分が人生の勝者の第一歩を踏み出したと感じた。
満足げに深呼吸をして、彼は引き出しを開けて、何かスナックを食べて喜びを収めようとしたが、中には何も無かった——この牛肉ジャーキは昨日入れたばかりなんだ。
ローランは窓辺に寝転んでいるナイチンゲールを振り返った。後者は口笛を吹きながら、何気なく風景を眺めているふりをしていた。自分が魚の干物をビーフジャーキに変えたのは、ナイチンゲールが盗まないようにするためだった。だけど彼女がビーフジャーキも取りに来るとは思わなかった?
そのとき、外の扉から足音が聞こえた。
「殿下、バロフソンブリからの面会の求めです。」
「入れてくれ。」
ナイチンゲールは以前のように姿を消すのではなく、フードを下ろして壁際のリクライニングチェアへと座った。
大臣助手が扉を開けて入ってきた。他にも誰かがオフィスに居ることに気づき、少し驚いたが、すぐに落ち着きを取り戻した。
「殿下、今月の人口統計が出揃いました。」彼は羊皮紙の巻物を差し出した。
「早いな?」
「住民登録簿があるおかげで、統計を取るのがずっと楽になりました。」大臣助手は笑って言った。「殿下の先見の明は本当に素晴らしいです。」