深呼吸をして力を振り絞り、凶悪犯を睨みつけた後、女性たちに向き直った。
「皆さん、この男が本当の悪者です!彼は強請りを...」
「おばさん、これがあなたの財布です。」凶悪犯は生の豚肉で僕を叩いた中年女性に花柄の財布を手渡した。
え...その財布...誰の?
「ああ、ありがとう、若いの。あなたは私の救世主だわ。あの泥棒に持って行かれそうだったのよ!」
「なんて心の優しい若者なんだろう。」
僕は口を開けたまま、緊張で汗をかいて立っていた。ここにいるのが間違いだったと感じ始めた。
「いえ、何でもありません、おばさん。泥棒を捕まえられなくて申し訳ありません。」凶悪犯は厚い眼鏡の奥から鋭い目で、まだ彼の腕にしがみついている僕をちらりと見た。「もう離してもいいか?」
「す、すみません...」すぐに離し、恥ずかしさで顔を地面に埋めたくなった。僕は何をやっているんだ、泥棒を逃がすなんて。最悪だ!
「俺が悪者に見えるか?」彼は鋭い目で答えを求めた。
「人を見た目で判断しちゃいけないよ。今の世界の問題は、表面的な判断からくるんだからね!」僕は彼を指さして説教するように言った。くそっ、彼は僕が頭おかしいと思ってるに違いない!
「おっと、ハハハ」と四眼の彼が軽く笑った。
「笑うなよ!僕をバカにしてるのか?君は模範生みたいに見えるけど、授業中にここにいるなんて。学校の時間だろう?ああ、サボってるんだな。けしからん!さあ、僕と一緒に学校に戻れ、そしたら風紀委員に報告しないから!」僕は怒ったふりをした。いい感じだろ?
「ハルキ、学校はそっちじゃないぞ。」
驚いて素早く振り返った。
「ど、どうして僕の名前を知ってるんだ?」
「俺は生徒会のメンバーだからだよ。今朝、朝礼の後に君の友達が、君がまだ学校に来てなくて、この辺で迷子になっているかもしれないと報告したんだ。それで、探しに来たんだよ。」
「ハハ、高校生が迷子になるなんて?」
「し〜、彼を笑わないでください。誰だって迷子になることはありますよ、おばさん。」
近所のおばさんたちのくすくす笑う声を聞いて、僕の顔は真っ赤になった。イケメンに腹を立てて睨んだ。
「馬鹿なことを言うなよ。どの高校生が学校に行く途中で迷子になるんだ?僕は迷子じゃなかった!」
「じゃあ、サボってたんだな。」
「そんなことない!僕は中学校で三年間連続で最優秀勤勉生徒だったんだぞ!」
「そうか。じゃあ、迷子でもなくサボってもいないなら、ここで何をしていたんだ?」
「.....」
「どうなんだ?」
「ただ...足が違う方向に向かっただけだ」と、できるだけクールに答えた。
バシッ!
「痛っ、なんで頭を叩くんだよ!?」
「ごめん、手が違う方向に向かっただけだ...くだらないことはもういい。俺について来い。学校に連れて行ってやる。おっと、ハハ。」
「何を笑ってるんだ!?」
「いや、ただどんな人が自分の近所で迷子になるのかと思って。学校をサボるための言い訳だと思っていたけど...」彼の大きな手が優しく僕の髪をくしゃくしゃにした。「君はいい子だよ、ハルキ。」
僕は赤面して、なぜか彼に褒められるだけでこんなに恥ずかしくて嬉しいのか理解できなかった。
「僕は高校生だ、子供じゃない」と、恥ずかしさを隠すために彼を睨んだ。
彼はそれ以上何も言わず、ただ僕の隣を歩き続け、時折小さく笑いながら、優しい目で僕を見つめてきた。その目に心が妙なリズムで鼓動するのを感じながら、学校までの道を歩いた。
それが僕たちの初めての出会いだった。