シソリは群衆に紛れ込み、他の人々と話し始めた。この失敗した取引を気にしていないようだった。
「奴隷売買か...」韓瀟はシソリの背中を見つめながら、眉をしかめた。
「私は金に困っているが、モラルはある」チェルローデは鼻を鳴らし、酒を一気に飲み干した。少し間を置いて続けた。「シャッタードリングには何百何千ものスカベンジャー勢力があり、タトゥーで識別している。一部のスカベンジャーは他のグレーゾーンビジネスも手がけている。例えば強盗、誘拐、恐喝、奴隷売買だ。あのシソリは奴隷売買産業の仲介人で、ターゲットを探す役目を担っている。ボーンレスバードというスカベンジャー集団に所属していて、ゴドラを含む複数の星系級文明から指名手配されている凶悪な集団だ」
「奴隷売買は珍しい種族や超能者を捕まえて、需要のある客に売り渡し、見世物や闘獣に使われる」
星間では超能者は珍しくないが、一般人の数と比べると遥かに少ない。星間人の目には、超能者はトレーニングを受けた戦士や天賦の才能を持つ天才のように映り、それは当たり前のことだった。
超能者は高い地位を享受しており、一部の一般人は超能者を支配したいという心理を持つようになった。そこで超能者の闘技が人気を集めるようになった。より高度なボクシングや格闘技の試合を見るように、観客は超能者同士が命を賭けて戦うのを楽しんで見物し、視覚的にも心理的にも満足を得ていた。正規のコロシアムは高給で超能者を雇うが、地下闘技場は奴隷として超能者を購入する。そのため、奴隷市場での超能者の相場は常に良好だった。
「お前たちは狙われている。気をつけた方がいい。だがスカベンジャーはコストが利益を上回る仕事はしない。宇宙船の中なら安全だろう。私が断ったから、しつこく追ってくることもないだろう」とチェルローデは言った。
「奴が狙っているのは、私たちアボリジニだけじゃないかもしれない」
韓瀟は物思いに沈んだ。
突然、宇宙船が揺れ、ワープ状態から脱出した。大広間の側面の窓からは、短角星号が灰黒色の惑星に近づいているのが見えた。地表には延々と続く灰色の山脈が広がり、緑の欠片もなく、すべてが荒涼とした岩石で、黒い水流が死んだような川となって流れていた。