豪雨は早く来て、早く去る。
一行が出発したのは雨が止んだ翌日で、彼女たちを灰色の城へ運ぶ船は美しい女性号だった。
シルヴィーは船側のフェンスに寄りかかり、布袋から一片のビーフジャーキを取り出し、頭上で振った。
“オーーーッ、オーーー”
巨大なカモメが鳴き声とともに空から降りてきて、翼でかき上げる気流に彼女は思わず目を細め、手中のジャーキーを一口でつかまれた。彼女が顔を上げたとき、カモメはすでに帆船の前方に戻り、広大な海原で航路を引き続き指し示していた。
これはマクシーから託された仕事だ。なぜなら彼女が鳥に変身している時、自分でジャーキーを取り出して食べることができないからだ。
現時点では彼女の姿は普通のカモメと大差ない(体型を除く)。しかしシルヴィーは相手の体内でうねる魔力と真の形態を見ることができる。もしよく見れば、魔力が四方八方から集まり、それが点々と光る光斑になって無形に消えていく過程も視認できるだろう。
「彼女は色々な鳥に変身するだけでなく、それぞれの能力も得ることができると聞いたことがありますが?」誰かが彼女の後ろで感心して言った、「私が知っている限り、カモメは海上で絶対に道に迷うことはなく、風暴の到来を事前に感知することさえできるのです。」
「確かにそうです、船長さん」-後ろを振り返らなくてもシルヴィーは話し手が誰かをはっきりと分かっていた-「そうでなければ、我々は新たな航路を思い切って選び、無尽の海角を迂回し、灰色の城の南西に上陸するなんてことはできません。」
彼女の能力は魔力の流れと変化を視認するだけでなく、彼女に死角のない広範囲視野を与えている。いつでも自身の周りの動きを見ることができる。そして障害物も視線の延長を妨げることはなく、彼女はデッキ下でサボって寝ている水夫や、船底から泳いで行く魚の群れまで見ることができる。
「そこに港はありますか?」とキャプテンジャックが一口の煙を吹き出した。「私はかつて探検家が無尽の海角の西に行ったことがあるのを覚えていますが、そこには崖と浅瀬以外に何もなかったのです。」
「なければなお良い」とシルヴィーは何も気にしていない様子で言った。「そうすれば皆さんも元の航路に戻れますからね。」