嵐が荒れ狂う海の上、古めかしい3本マストのキャラック船が波に合わせて浮き沈みを繰り返す。
進む速度は遅く、船体も大きくはない。空と海が一つに溶け合ったかのようなこの災厄の中で、その姿はまるで木から落ちた枯葉のようにも見える。それでも、どれほど嵐が激しく、波がどれほど高く押し寄せても、船は傾くことなく、静かに航行を続けていた。
アルジェ・ウィルソンは広い甲板に立ち、周囲を囲む巨大な波の山を見つめながら、何かを考えこんでいる。
「また月曜か……。」アルジェはぽつりと呟いた。
その日は大地母神に捧げられ、新たな繁栄と衰退の周期が幕を開ける日だった。
しかし、アルジェにとって、それは別の意味をもつ日でもあった。それは、灰色の霧に包まれた神秘な存在に関わる日だった。
「少なくとも、まだ正気を保っている……」彼は視線を戻し、皮肉めいた笑みを浮かべた。
そのとき、少人数の船員の一人が近づいてきて、恭しく尋ねた。
「司教様、今回の航海の目的は何でしょう?」
アルジェは周囲を見回し、淡々とした声で答えた。
「オーロラ会の『傾聴者』を捕らえることだ。」
……
嵐は過ぎ去り、霧が立ち込める中、時代遅れながらも火砲を備えた奇妙なキャラック船が漂っていた。
年の頃は8、9歳の少年が金髪の柔らかな髪を揺らしながら、怯えた様子で周囲の無秩序な海賊たちを見つめている。彼らが大樽からビールを飲み、ロープを使って船内を飛び回り、互いに嘲り合い、時には拳を振り上げて殴り合う様子を、少年はじっと見ていた。
少年は陰影の中に立つ黒いローブをまとった男性に視線を向け、声を押し殺して尋ねた。
「お父さん、僕たちはどこに行くの?」
5日前、彼は物心がついてから初めて父親と対面した。その父親は自らを冒険家と名乗っていた。
もし母親が遺した一枚の油絵が彼の身元を証明していなければ、そして孤児院が彼を迎え入れる準備をしていなかったなら、少年は絶対に故郷を離れ、このほとんど見知らぬ父親と共に旅に出ることはなかっただろう。
陰影の中に立つその男性は、優しい表情で息子を見下ろし、こう答えた。
「ジャック、君を神聖な場所へ連れて行くよ。造物主がかつて住んでいた『聖域』へ。」