叶辰はエレベーターでロビーに来た。
フロントの可愛い女の子はずっと見回していて、叶辰を見つけると、目に光が宿るようになり、急いで挨拶した。「ご主人、孟ディレクターにお会いになりましたか?」
叶辰は手元の書類を挙げて見せた。「契約はもう結ばれました。これからはここに来ることがよくあるかもしれません。」
その美人お姉さんは、心が躍る。「それは良かった!」
叶辰は眉をひそめた。「え?」
その美人は自分の失態に気づいて、鼻をついてから恥ずかしそうに言った。「あ、すみません、お名前がまだ分からないのですが、私の名前は孟小琪です。これからも面会の予約を取りたい時はいつでも私に連絡してください。これは私の名刺で、WeChatのIDも書いてあります。」
もう一人のフロント係は孟小琪を見てほくそえんだ。「小琪、それは公平じゃないわよ。さっき男性がウィーチャットのIDを求めてたのに、絶対にダメだったのに、なぜ今すぐにこのイケメンに名刺を渡したの?」
孟小琪は共同務める女性をにらんで、顔が真紅になった。
叶辰はその名刺を受け取り、にっこりと微笑んだ。「私の名前は叶辰です、ありがとうございます。」
そのかわり、心の中では、「これからもこのスーツを着ることが多くなるだろうね、なんというか桃源運がついてるみたいだ」と考えていた。
叶辰が青禾グループを出たところで、乔正虎に会うためにタクシーを探そうとしていると、細い手が彼の背後から伸びて、肩に直接パシンと叩いた。
「叶辰!」
彼は反射的にその手をつかんで、背後の人を肩越しに投げ飛ばそうとしたが、すぐに止まった。
肩を叩いてきた人が彼が知っている人だったからだ、ハイリー・バイン。
ただ、今日のハイリー・バインは制服を着ていなくて、シャツとジーンズを着ていて、とてもカジュアルだった。
「なぜここにいるの?」叶辰は好奇心からそう尋ねた。
ハイリー・バインは自分の腕をひねり、ちょうど叶辰に脱臼させそうなところだった。彼女は叶辰を見て眉をひそめた。「このセリフは私が君に聞くべきだろう。私は近所で任務を遂行していたんだ。一体どうして君がここにいるの?」