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凍雨が舞って、聖都の血臭を薄め、アレシアは大剣を構えながら激しく息を吹き返していた。
彼女がヘルメス防線の戦闘に参加するのは初めてではないが、新しい聖なる街が陥落する日が来るなんて思ってもみなかった。
城壁は完全に崩壊してしまった。
アレシアはこれほど恐ろしいモンスターを見たことがない。巨大な虫型混合獣が地下から出現し、体が氷河の壁に密着し、骨質の鋭い爪が壁面に逆さまに突き刺さるようにして、一歩ずつ城壁の頂上へと登ってくる。その身体はまだ地面から完全には出ていない。
体だけが巨大ならまだしも、誰もが予想だにしなかったが、そのモンスターは口を大きく開け、口からはハイブリッド悪獣の大群が吐き出され、城壁上は一瞬で混乱状態に陥ってしまった。
本来なら整然と組織された部隊も悪獣の突撃でまったくの混乱と化し、アレシアの所属する裁判軍先遣キャンプも分断されてしまった。彼女は目の前で仲間たちが次々と悪獣に飲み込まれていく光景を目の当たりにし、何もできなかった。人間の暖かい血とモンスターの黒い血が混じり合い、石板の地面を伝って亀裂に沿って流れていく。
撤退のホーンが鳴り響きと同時に、聖都に設置された投石機も作動し始めた。巨大なグラナイトの石が天から落ちてきて、城頭にまだ多くの部隊や王国の軍隊が残っているにもかかわらず、まったく意に介さなかった。
アレシアは、身体を守っていたディガット隊長が大石に直撃されるのを目の当たりにした。彼女が地面から立ち上がったとき、彼はすでに鎧ごと裂けた地面に埋まっていた。その体は褶皱だらけの羊皮紙のように見え、腹部の亀裂からは腸が滲み出て、体の下には煙を上げる鮮血が小さな水溜りを作っていた。
もし自分が石が落ちる前に飛び跳ねていなかったら、おそらく同じ運命をたどることになっていたと彼女は考えた。
最後に自分がどのように包囲網を抜け出し、城壁の下まで退避したのか、アレシア自身はすでにはっきりとは覚えていない。周囲は絶叫と悪態が絶えず、全員が武器を振り回して狂戦士のように戦い、彼らが果たして悪獣と戦っているのか、それとも仲間同士で戦っているのかさえわからない。
100人以上の裁判軍がいた中で、彼女自身を含めて生き残ったのはわずか12人だけだった。