桜咲美月の心臓は激しく鼓動していた。
彼女の手のひらには汗がにじみ、全身が緊張で震えていた。
「うん、いつでもいいよ!」
美月は力強く返答し、その声には決意が込められていた。
彼女の瞳は真剣さを宿し、影と対峙する。
影が再び微笑んだ。
「ならば、見せてもらおうか…」
突然、影から黒いエネルギーが渦巻き、体育館全体に広がった。
美月は反射的に体を覆い、念力を高めた。その瞬間、彼女の周囲に薄い光のバリアが形成された。
「気をつけて!」美月は叫びながら、バリアを強化した。
影が一歩前に出るたびに、その黒いエネルギーがさらに濃く、圧迫感を増していった。
美月の顔には焦りの色が浮かぶが、それでも彼女は歯を食いしばり、影と向き合っていた。
「美月、バリアを維持しながら少しずつ距離を詰めるんだ!」
僕は黒いエネルギーの渦を避けながら、美月の隣に立ち、声を張り上げた。
「こいつの力の中心を突けば、エネルギーが崩れるかもしれない!」
美月は大きく頷き、呼吸を整えた。
「分かった…でも、何か近づくたびに圧迫感が増してる。大丈夫、まだいける!」
影が突然、右手を掲げると、黒いエネルギーが矢のように美月に向かって飛んできた。
「危ない!」と叫びながら、僕は美月のバリアの端を押さえた。
その瞬間、衝撃が響き渡り、二人とも一瞬後ろに吹き飛ばされそうになった。
「美月、やれる!君の力を信じて!」 僕は彼女の肩を掴み、再び立ち上がった。
「あの影を打ち破るのは、君の力しかない!」
美月は小さく息を呑み、拳を強く握りしめた。
「分かった。やるよ!」
彼女の瞳に宿る光が、一段と輝きを増した。
桜咲美月は、額に冷や汗を浮かべながらも、その瞳には決意の炎が燃えていた。
彼女は僕の言葉に勇気を得て、深く息を吸い込んだ。
「よし、行くぞ!」
桜咲美月は声を張り上げると、黒いエネルギーの波を割って前進した。
念力でバリアを維持しながら、足元をしっかりと地面に食い込ませる。
影の形をした敵は、再び黒い矢を放とうとした。
桜咲美月は瞬時に反応し、バリアを強化した。その結果、矢は光の壁に弾かれ、散らばった。
「お見事だ、美月!」
彼女の背中を押すように声援を送る。
桜咲美月は薄い唇を噛み、全身の力を集中させた。
念力で黒いエネルギーを押し戻しながら、一歩ずつ影に近づく。
彼女の心臓は激しく鼓動し、力が尽きるのではないかという恐怖が頭をもたげた。
「もう少しだけ…!」
彼女は自分に言い聞かせるように呟き、光のバリアをさらに強くした。
「美月、その調子だ!あと少しで届く!」
僕は周囲の黒いエネルギーの動きに目を光らせながら、彼女を見守った。
影は焦りを見せたのか、エネルギーをさらに膨れ上がらせて抵抗を強めていた。
美月は声を振り絞るように叫んだ。
「私が近づいたら、影の動きを止めて!」
僕はすぐに答えた。
「任せて!タイミングを見て一気に仕掛ける!」
彼女の念力はますます強まり、光のバリアが影のエネルギーを押し返し始めた。
その瞬間、僕は影の一瞬の隙を突き、床に転がっていた金属の破片を手に取って投げつけた。
影はその一撃で体勢を崩し、黒いエネルギーが一瞬揺らぐ。
「今だ、美月!」
美月は力を振り絞り、全ての念力を影の中心に向かって放った。
光が眩く輝き、影を包み込む。
体育館全体が静寂に包まれた瞬間、影の姿は霧のように消え去っていった。
美月は息を切らしながら振り返り、僕に微笑みかけた。