ジャスミンは彼を無表情で見つめた。
夜遅くに彼女が必要になるだろうって?
彼女は彼の言葉に驚いて、ただ呆然と彼を見つめた。
そして彼は彼女の首筋に更にキスを落とし、彼女は快感に頭を後ろに投げ出した。
それから彼は彼女の顔を両手で包み、彼女の目を覗き込んだ。
彼女は彼を見下ろし、この男に対して感じるすべてのことしか考えられなかった。
心の底から彼女を憎んでいるこの男、でも二人が一緒にいると魔法のような何かが生まれる。
彼は優しく彼女の髪を耳の後ろに掛けた。
彼自身が感じているこの感情は何なのか?
彼にはわからなかった。
彼には心がなく、感情は限られていることを知っていた。
しかし叔父や晩餐会の全員の前での行動の後、彼女のことを気にかけていることを否定できなかった。
彼女に悪いことが起こらないようにしたいと思っていて、それが彼を怖がらせた。
しかし、それを認めることはできなかった。
彼女と交わるときには何か特別なものがあった。彼には理解できない何か。
理解するのが怖いと思うもの。
彼は彼女に合わせて演じることにした。
彼女の父親と戦うまでは彼女に彼のベッドを温めさせ、その後で彼女をどうするか決めることにした。
彼女とは何の関係も持てないはずだった。
彼との結婚の絆で結ばれたとしても、彼女は奴隷だった。
ベイルを倒して殺せば、彼女を追い払うことができるだろう。
彼の人生に彼女の居場所はないと、自分に言い聞かせようとした。
彼女が動いたのを感じ、しばらく彼女の赤い巻き毛を弄っていたことに気付いた。
彼は彼女の滑らかな背中を撫で、そして彼女の指に自分の指を絡ませた。
そして彼女の手がとても硬いことに気付いた。
「君の手はとても硬いね」と彼は言った。
「ああ」と彼女は呟いた。
彼女は起き上がり、シーツを体に巻き付けながら髪を耳の後ろに掛けた。
「姫や群れのアルファの娘の手は荒れていない。むしろかなり柔らかいものだ」と彼は彼女の手のひらを優しく擦りながら言った。
彼女は唇を噛み、こう言った。「それは仕事のせいです。誘拐されていたときはとても激しく働かされました」
彼は彼女の手を見つめた。