奇妙な、歪んだ、ぼんやりとした波動がさっと過った。それはほんの一瞬のことでクラインは自分が幻覚を見たのではないかと疑うところだった。
もし彼が霊感をしっかり習得しそれに慣れていなければ、この時、かなり高い確率でこの異常を見過ごしていただろう。
上の階に妹がいることを思い出し、クラインは眉を寄せ、ステッキをきつく握ると、洗面所を迂回して、ウッド家の階段へと向かった。
彼は足早に上に向かい、残された痕跡を把握した霊感を頼りに、バルコニー近くのリビングルームの扉の外までやって来た。
ここに違いない…クラインは一言呟くと、手をあげて眉間を軽く2度叩いた。
それぞれの「オーラ」が壁や木製のドアを通して彼の瞳に入り込んできた。大部分の色は正常で、輪郭はぼやけていた。
しかしその中に一つ、表面に怪しい黒ずんだ緑が漂うものがあった。黒ずんだ緑はゆっくりと中に向かって浸食していく。
「やっぱり問題があるようだ。」クラインの表情は異常に厳しいものとなり、右手で左腕に巻きついている銀の鎖を解いた。
彼の左手は銀の鎖を握り、黄水晶のペンダントを目の前に自然に垂らした。
揺れがおさまるのを待って、彼は頭の中に光の玉を描くと、心の中で静かに呟いた。
「俺の前の部屋の中に人智を超えたものによる危険が存在している。」
——通常であれば、「ペンデュラム法」は占い師自身と関連する事柄や、狭い範囲内の客観的な状況にのみ適している。したがって、クラインの描写は極めて特殊であると言えた。「危険」は自身に影響を与える可能性があり、「部屋」は目の前にある。
……
「俺の前の部屋の中に人智を超えたものによる危険が存在している。」
一度また一度と、たっぷりと7度目を呟いた後、クラインは目を開けて黄水晶のペンダントが時計回りに回っているのを見た。そのスピードはかなり速いものだった。
これは部屋の中に確かに人智を超えたものによる危険が存在していること、そしてその危険レベルが低くないことを明らかにしていた。