浮遊する砂塵は黄色い霧のようで、まるで天と地を薄絹で覆うように見えた。砂塵が地面に落ちるのを待ち、視界が明確になるまでだった。
猛烈な風の中、一人の影が難辛に身を起こし、地面に片膝をついた。
滴、滴……
口元から血が滴り落ちる。首領は顔を覆いつつ、ゆっくりと立ち上がった。
その一瞬、空気はまるで凍りつくようで、戦場が一瞬、奇妙な静けさに包まれた。敵か味方か、誰の視線も意志とは無関係にそちらに向けられた。
萌芽組織の首領は、常に黒色金属のマスクをつけており、その正体は極めて不思議であった。ほとんどの人々は彼の素顔を見たことがない。
これほど大きな影響力を持つ人物であれば、大物であるはずだ。各国の情報機関が彼の正体について様々な推測を立てている。萌芽が古代の戦争中に設立されたことから、首領が古代の強力な者で、新しい顔を持ったことがもっともありそうな推測だ。
韓瀟も思わず息を呑み、そちらを見た。前世では、萌芽が歴史の長い川で消え去るまで、プレイヤーは首領の正体を掘り下げることができなかった。だから彼も首領の真の来歴がわからない。
首領が掌を下ろすと、目の前に広がったのは、傷痕だらけで醜く歪んだ顔だった。まるで皮膚の下にムカデが這っているかのよう。これらの傷はひどく形状がばらばらで、まるで猛獣に引き裂かれたような痕跡があった。
これはまったく見知らぬ顔だ。
その顔は見るにたえないほど奇形だったが、その形状は何とか認識できた。韓瀟は自分がダークウェブで積み重ねてきた情報の中で、この顔を見たことはないと保証できた。彼は六カ国の強者たちやベネットたちを見たが、みんな同じく困惑した顔をしていた。
誰も首領を知らない。
ベネットは眉を深くひそめていた。彼は古代から生き残ってきた伝説的な存在で、その時代の数えきれないほどの強者たちを記憶していた。彼らが戦死してしまったり、年老いて亡くなったりしたとしても覚えていたが、首領の顔については何も思い出すことができなかった。これは三つの可能性がある。
ひとつは、首領もかつてはマスクをつけて活動していた。二つめは、彼は自分の正体を隠すために整形手術を受けた。三つめは、彼が古代から活動していた強者ではなく、ひっそりと隠れていたということだ。