スンイは背後の動きを耳にした。叶辰が帰ってきたことを知った。
彼女は振り向き、その場で一回転して、瞬きながら尋ねた。「私、この服、どう?綺麗だと思う?」
「綺麗……」
スンイはその答えを聞いて、とても上機嫌で、小さな歌を口ずさみながらメイクを続けた。
「なに、その格好?」
叶辰が口を開いた。彼は絶対にスンイがこの服装で何かのパーティーやイベントに参加するのを望んでいない。あんな色気のある衣装を着ていたら、きっと色男どもが目をつけるだろうからだ。
彼とスンイは特別な関係ではなかったが、近日の交流を経て、彼はすでにスンイをジャンチャンで一番親近感を持てる人として見ていた。
スンイは髪の毛を耳にかけ、振り向いて微笑んだ。「女がお化粧をするのは、もちろんお買い物に行くためよ……」
「誰とお買い物に行くの?」叶辰は思わず尋ねた。
スンイは叶辰を一瞥しながら、説明した。「もちろんあなただわ。他に誰がいると思ってるの。今日は土曜日で、やっと休みが取れたの。せっかくだからあなたと一緒にお買い物に行こうと思った。あなたの服装も見てみなよ、ぼろぼろだわ。ついでに携帯も買おう。重要なときに連絡が取れないなんて困るでしょう?」
叶辰はその言葉を聞き、心がぽかりと暖かくなった。この見知らぬ、そして懐かしい町で、自分のことを気にかけてくれるのはスンイだけだった。
そこで、彼は自分の服装を見て、自己満足の表情を浮かべた。「でも、僕はお買い物が好きじゃないんだよ。」
「ダメ!行くしかないの!」スンイは即座に叶辰の考えを否定し、「実は私、ただ好奇心からあなたがちょっとオシャレをしてみたら、どんな風になるか見てみたいの。もしかしたら、私の春心を揺さぶるかもしれないわよ~」と付け加えた。
叶辰はセクシーなスンイを見て、何かを思いついたようで、「僕が行くのもいいけど、その代わりに服を変えてよ。」と言った。
「了解。」
……
一時間後、運動着で身を固めたスンイと叶晨は大都アパートを出てきた。
スンイは腹を立てていた。運動着でデートに出かける女の子なんて居ないのに、叶晨の強い要望がなければ彼女は生涯このセットの服を着ることなどなかっただろう。