「美月、離れて!」
僕はとっさに彼女の腕を引き、爆発する球体から距離を取った。
美月は息を切らしながらも、瞳に揺るぎない決意を宿していた。
「ダメ、これを放置したらもっと大変なことになる!」
彼女は再び立ち上がり、手を前に突き出した。
「念力を限界まで使う…!少しだけ時間を稼いで!」
僕は頷き、散らばる黒い霧に目を向けた。
「分かった。全力でサポートする!」
美月の集中力が増し、彼女の念力が球体の残骸を再び押さえ込もうとしていた。
その光が、倉庫を満たし始めた。
美月の全身から放たれる念力が、球体を包み込む光のバリアを形成した。
彼女の顔は苦痛に歪み、額から汗が滴り落ちた。
その姿はまるで戦う女神のようだった。
「もう少しだけ…!」美月の声は掠れ、それでも力強く響いた。
彼女は全身の力を振り絞り、光のバリアを押し込む。
瞬間、球体から放出される黒い霧が激しく渦巻き始めた。
美月の顔が苦痛に歪む。彼女は歯を食いしばり、決して目を逸らさなかった。
「うっ…くぅ…!」
美月の念力が限界に挑戦するたび、黒い霧が押し返される。
倉庫全体が揺れ、天井から埃が舞い降りた。
「美月、待って!」
僕は霧の中に現れた影に視線を送りながら言った。
影は冷たく笑いながら口を開いた。
「お前の力の由来を知りたくないか?」
美月の動きが止まる。
「私の力が…どういうこと?」影は指を倉庫の奥に向けた。
「その鍵はここに隠されている。この場所は、力の記憶を封じた場所だ。」
僕はその言葉に違和感を覚え、美月にささやいた。
「罠かもしれない。でも、ここにヒントがあるなら見逃せない。」
美月は息を整え、影をにらみつけながら言った。
「なら、その記憶を解き明かしてみせる。」
倉庫の奥には古いノートが置かれていた。美月がそれを開くと、彼女の力に似た能力の存在が記されていた。
影は静かに笑みを浮かべながら、霧の中に溶けていった。
「真実を知る覚悟があるなら、続きを読め。」
ミステリーの扉が静かに開かれる瞬間だった。
桜咲 美月は震える手でノートをめくった。
文字が彼女の目を刺すように躍る。彼女の表情は戸惑いと驚きで歪んだ。
「これが…私の力の由来?」 その時、倉庫の外から微かな音が響いた。
美月は振り返り、不安げに目を細めた。
「誰かいる?」声は震えていた。
「気をつけろ、美月。」
あなたの警告に、彼女は頷く。
ノートのページをめくるたび、美月の瞳が深く揺れた。
彼女の唇が震え、呼吸が浅くなる。
「この記録...私が子供の頃、何かあったんだ...」
美月は顔を上げ、あなたを見つめた。
「私たち、もっと調べなきゃ...」
「美月、何が書いてあったんだ?」
僕は彼女の手元を覗き込みながら尋ねた。 彼女は震える声で答えた。
「…私が小さい頃、この町で何か実験が行われていたみたい。それに私の名前が…記録されている。」
その瞬間、倉庫の外でまた微かな足音が聞こえた。
「誰かが近づいてる。ここで話してる場合じゃない!」
僕はノートを閉じ、彼女の手を引いて言った。
「一度ここを出よう。この情報を整理する必要がある。」
美月は頷き、二人で倉庫を抜け出した。
その背後で、影が笑みを浮かべる気配がした。
「秘密にたどり着けるか、見ものだな…」と低い声が響いた。
倉庫を出ると、夜風が冷たく肌に触れた。桜咲 美月は肩を震わせながらも、しっかりと目を見開き前を向いた。
「私、怖いけど…これ、もう逃げられない気がする。」
彼女の声には恐怖と決意が入り混じっていた。美月の瞳は揺れ、その奥に隠された秘密への恐れが垣間見えた。
「私たち、どこへ行く?」美月は不安げに問いかけた。
彼女の指先が冷たく、握りしめた手のひらから汗が伝わってきた。
「まずは安全な場所だ。」僕の言葉に、美月は小さく頷いた。
二人は急ぎ足で歩き始めた。
美月の髪が風になびき、その黒髪が彼女の決意をより強く見せていた。
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