翌朝、他の狼たちは目覚め、旅の準備ができていた。
ザデンは朝方までずっと起きていた。
昨夜、エリックと共に獣を倒してから、眠れずにいたのだ。
「閣下」オーウェンが言って、ザデンの思考の流れを遮った。「皆、出発の準備ができています」
ザデンは立ち上がり、馬に乗ってから、先頭を行くエリックに追いついた。
「大丈夫か?」エリックが尋ねた。
「ああ」ザデンはうなずいたが、自分でも大丈夫だとは思っていなかった。
他の者たちは、昨夜のリリアットとの出来事をまだ知らなかった。
エリオンだけは知っていたが、それは彼が朝方に起きていたからだ。
そしてエリックは男たちの方を向いた。
「我々は森に向かう」エリックが告げた。「何があっても離れ離れにならないようにする。危険だ。何を見ても、何を聞いても、この群れから離れてはいけない。わかったか?」
「はい、ガンマ!」全員が唱和した。
「何か質問があれば」エリックは全員の目を見渡しながら言った。「今のうちに聞いておけ」
数人が手を挙げた。
エリックは、他の狼たちも同じ疑問を持っていると思われる者を指名した。
彼を指さした。
「何を恐れるべきなのでしょうか?」高位のベータであるハリーが尋ねた。
「森には多くの生き物がいるが、そのほとんどは無害だ。というより、リリアットに支配されているんだ。リリアットは、お前たちの最も望むものの姿を取る生き物だ」エリックは説明した。「家族や恋人、妻、娘、大切な人がそこにいるように思わせる。呼びかけられて、狼の力を十分に使わなければ、森の中へ誘い込まれてしまうだろう」
「森の中へ連れて行かれたらどうなるんですか?」誰かが尋ね、全員の目がエリックに向けられた。
「二度と戻ってこられない」エリックは言った。
その場が静まり返った。