クラインは考えれば考えるほど、その可能性があると思った。そうでなければ誰が目的もなくあの定期刊行誌を借りるというのだ。
「まあ、ホルナシス主峰の古代遺跡研究という人気のない分野は、それを専門とする講師や准教授を除けば、一般愛好家はおそらく聞いたこともないだろう。大学の史学科を卒業した以前の主ですら、アンティゴノス家のノートで知ったくらいだ……ティンゲン市は学園都市だが、このことに興味を持っている人はそれほど多くないはずだ……仮にいたとしても、そのほとんどは大学関係者だろうから、わざわざデビル図書館へ行って借りる必要なんてないのだ……」
「最も重要なことは、本を借りた時期が、折良く最近だったということだ……」
「こうして分析してみると、本当に怪しいところがあるなあ。俺はあのとき、洞察力が足りなくて、考えてもみなかったよ……ああ、俺にはシャーロック・ホームズを演じるような、探偵の才能はないようだ……」
彼が考えを巡らせている間、「ドラゴンバー」のオーナーのスウェインは、腑に落ちない様子で尋ねた。
「何か問題があるのかね?」
周囲には客や店員がいたため、彼は曖昧に尋ねるしかなかった。
「何も問題ありません。僕はただ、この男性についてどのように調べたらよいか、考えていただけです。ご存知のとおり、ハナス・ファンセントさんは自宅で亡くなりましたから。」クラインは言うことを事前に考えていた。
彼は「罰を与えし者」たちに、ホルナシス主峰の古代遺跡について、興味を持たれたくなかったのだ。
「ファンセントはティンゲン市では比較的有名な占い師で、ここにはよく来ていた。」スウェインはやはりその場を取り繕った言葉に納得し、記憶を辿ってこう答えた。「そういえば絵の人物は、最初のうちは確かにファンセントと一緒に来ていたな……」
「これは正に僕が知りたかった情報です。彼の名前を覚えていらっしゃいますか?」クラインはすぐに追加の質問をした。
スウェインはハッハと笑って、首を横に振った。
「ニールのようにもともとの知り合いじゃない限り、私は客の氏名や身元を聞くことはないんだよ。」
「そうですか。」クラインはわざと少しがっかりした素振りを見せた。