バァン!
銀の弾丸が数メートルの距離から、タキシード姿のピエロの喉に正確に食い込んだ。ドバドバと鮮血が流れ落ち、ピエロの肌と蝶ネクタイを赤く染める。
タキシード姿のピエロは悲鳴をあげることさえかなわない。のどからはひゅうひゅうと息が漏れる。手をあげて弾丸を取り出そうとするが、肩と肘の動きはまるで関節に接着剤を満たされたように重く、鈍い。
バァン!
半瞑想状態のクラインは血におびえることもなく、再び引き金を引く。まるで練習をこなすかのように淡々と。
タキシード姿のピエロの額に突如ぽっかりと穴が開くと、真っ赤な血が噴き出し、ピエロの目の光が消えていく。精巧につくられた回転式拳銃の威力は、クラインが想像していたよりもずっと強かった。
膝を曲げ、腕を垂らしたタキシード姿のピエロがゆっくりと地面に倒れ込む。固まった目は光を失っていた。
ピエロの体は数回痙攣すると、ゆっくりと広がり、ついには動かなくなった。
命中したのを見届けたクラインは身を翻してシリンダーを開放させ、空になった薬莢を次々と地面に落としていく。
そして、黒いスーツに低めシルクハットをかぶった姿でエルに近づきつつ、同時にポケットから最後の1発、細長い銀のモンスター・ハント弾を取り出し、シリンダーに込めた。
タキシード姿のピエロの無惨な姿を振り返らなかったのは、純粋に初めて人を殺めることへの不快感からだったが、さっきはそうするほかなかった。人形に完全に取り込まれたピエロが何をしでかすか、分からなかったのだ。
それに、もう封印物「2-049」の影響圏内に入りたいとは思わなかった。今度は不可解な変化が起きて、「開運の儀式」が失敗に終わるかもしれないのだ。