「よろしい。」クラインはできるだけ自分の声を抑え、抑揚なく聞こえるようにした。
背高椅子のひじ掛けに左ひじをつき、わずかに傾いてきた額を指で軽く支え、落ち着いて聞いているように見せかけた。
アルジェは少し考えてから言った。
「アンティゴノス家は古い家系です。その歴史は第四紀前の厄災紀元にまで遡ります。2つ目の『冒涜の石板』にも関りを持っています。」
2つ目の「冒涜の石板」?「冒涜の石板」はもう1つあるのか。一体いくつあるんだ?クラインは目を細め、姿勢を崩すところだった。
「吊された男」と「正義」の話によると、「冒涜の石板」には22の神の経路が記されているそうだ。
あんなに大事なものがまさか2つ、或いはもっとあるのか。
22の神の経路……序列経路……あれ、この2つの言葉をイコールでつなげてもいいのか。1つの完全な序列経路は神の玉座に通じている道なのではないか。
その瞬間、「2つ目の『冒涜の石板』」という言い方に、クラインの頭の中に次々と考えが浮かんできた。もし濃い灰色の霧に遮られていなければ、自分の感情的な反応は恐らくミス「観衆」に気付かれていただろうと、彼はそう信じて疑わなかった。
「厄災紀元」という言葉については、プロの彼にとって、知らないわけでもない。第三紀の別称だ。
この間の復習で、クラインは第三紀が輝きの時代と災難の時代の2つの時代に分かれていることまで知った。
「2つ目の『冒涜の石板』?」オードリーは隠すことなく疑問を呈した。
彼女は心が落ち着き、完全に「観衆」の状態に戻っているのではなかった。
いい質問だ。クラインはミス・正義に密かに喝采を送った。
「愚者」としては尋ねにくい質問だったからだ。
アルジェは愚者を一瞥した。そして相手が姿勢を変えておらず、声を出して止めようとしなかったのを見ると、少し考えてから言った。
「1つ目の『冒涜の石板』は暗黒紀元に出現しました。つまり、私たち人類が神の加護の下、生き残ろうともがいた第二紀です。2つ目の『冒涜の石板』は第三紀の終わりに出現しました。これは、厄災紀元の終幕を示しているともいえるでしょう。」