「何をするつもりなの?」秦萱は眉をひそめて聞いた。
「あのバリエーション毒クリスタルサソリの死体を回収し終わったら、あなたと一緒に底無しの洞から出るよ。」ハンセンはそう言って洞の中へと進んでいった。
「中には毒クリスタルサソリが沢山いるよね、何かドラゴンの唾液香みたいなもの必要ないの?」秦萱は疑問に思いながらハンセンを見つめていた。
「真の男が香りを焚くなど必要無いさ。」ハンセンはただ山洞の奥へと進んでゆき、しばらくすると体が青晶のように透明で大きさが一尺もある巨大な毒クリスタルサソリを抱えて戻ってきた。
秦萱は奇妙そうな表情で長い間ハンセンを見つめ、やがてため息をついて言った。「私だまされたわね、あなたはもう洞の外にいた毒クリスタルサソリを全て殺したでしょう?」
「秦大小姐と言ったら秦大小姐、賢いわね。」ハンセンが背中にある布袋の口を下に向けて振ったら、中から毒クリスタルサソリの死体が雨のように降ってきて、すぐに山になった。
秦萱は予想はしていたものの、ハンセンがそんなに多くの毒クリスタルサソリを殺したと見ると、やはりびっくりした。
ハンセンはバリエーション毒クリスタルサソリの死体をポケットに入れ、次に原始のサソリの死体をできるだけポケットに詰め込み、それ以上入らなくなるまで詰め込んだ。
だが外にまだたくさんの毒クリスタルサソリの死体が放置されていたので、ハンセンはそれを捨てるのが惜しくなり、決心をして毒クリスタルサソリをつかみ、ナイフで外壳を割り、中のゼリー状の半透明の血肉を取り出すと、そのまま口に詰め込んだ。
「原始のサソリの血肉を食べると、4点の原始遺伝子が得られる。」
ハンセンは次々とサソリを捕まえては剥き、地上に落ちていて袋に入れられなかった毒クリスタルサソリたちを皮を剥ぎ取り、食べつくした。貫甲で包まれた腹は明らかに膨れ上がった。
最初の数匹はいくらかの原始遺伝子を増やしていたが、後半は数匹食べなければ1点しか増やなくなり、最後にはまったく増えなくなった。
「あなたって本当に救えないわね。そんな気持ち悪いものも食べられるなんて。一切損をしないようにするなんて。」秦萱はハンセンのように豊かなものを手に入れながらも、節約を怠らない人間にはかつて出会ったことがなかった。