「おとな、城の西側の港エリアに何か変なことが起こってるみたいだ」と、通りの封鎖を担当する近衛兵が急いでメード伯爵の側に歩み寄った。「なんだか変な音が聞こえてきて、二組の部下を送り出して状況を調べさせたんですが、誰一人戻ってきませんでした」
「何だって?」ヤキ・メードが額にしわを寄せて言った。「君が聞き間違えたんじゃないだろうね?」
「いえ、はっきりと聞こえました。まるで人が息を繰り返して吸ったり吹きだしたりしているような音が……」近衛兵はその音を模倣した。
「それ、ただの浮浪者のいびきじゃないのか?」
「こんな寒い天候で外で寝ている人なんて早々に凍え死んでしまっていますよ、おとな」と近衛兵が断言した。「それに、たとえ人間があんなに大きないびきをかくとしても、その人物は少なくとも城壁ほどの巨体を持つ巨人でなければなりません」
伯爵は彼をしばらくじっと見つめた後、頭を振り向いて大声で叫んだ。「ダカン卿!」
「おとな、何でしょうか?」胸にメープルの家紋をつけた貴族が近づいてきた。
「おまえの近衛隊を連れて、私の部下と一緒に城内の港を調査しに行け」ヤキは彼の肩をたたいた。「何か情報が入ったらすぐに私に報告しろ」
「え……誰か他の人に頼んでいただけませんか?」若い貴族がためらった。「父は私に、あなたと一緒に城に入るようにと言付けています」
「港を一回りするのにどのくらいかかる?私たちはここで待つ余裕がある」と伯爵が笑った。「たとえゴーンローズ反逆者が武器を降ろして降参しても、私はここであなたを待つつもりだ」
「それ……了解」
二人が去るのを見て、ヤキの表情が冷たくなった。何ものだ、息子を連れて城に入るだけで、同じ功績を得られるとでも思っているのか? きったない計算だ。陛下の秘密の手紙には私ひとりしか書かれていなかったんだ!
少し経った後、西側から遠く銃声が聞こえてきた。
何が起こっているのだ? ヤキはすぐに警戒心を抱き、メープル家の長男が火縄銃を持ってなどいない。
彼が自分の騎士を派遣して状況を確認することを考えていた時、先ほどの報告をした近衛兵がキャンプサイトに突進して来て、「大、大人……大変だ!」と叫んだ。
「何が大変だ?」